水処理事業 2026.01.08

民間企業の製造工場などの生産工程において排水を適切に処理することは、企業活動の持続可能性を確保する上で不可欠な要素です。
それはただ環境への配慮という観点にとどまらず、法律遵守や企業の社会的責任(CSR)の一環としても非常に重要な課題となります。
そして、これらの排水処理施設の多くは、高度経済成長期の1960年代から70年代にかけて建設されたもので、現在では30年以上が経過しているケースも少なくありません。
その結果、設備の老朽化が進行し、想定外のトラブルや運転リスクが高まっています。
こうした背景から、あらためて自社の排水処理施設の状態を見直し、老朽化の進行状況や潜在的なリスクを把握することが重要となっています。
本コラムでは、排水処理施設の老朽化に伴うリスクと、その具体的な対策について事例を交えながら解説します。
また、適切な点検・改善に取り組むことで得られるメリットを紹介し、安全かつ効率的な設備運営のヒントをお伝えします。
老朽化した排水処理施設を放置してしまうことによるリスクは見過ごせません。
突発的な設備トラブルが発生すれば、工場の稼働が停止し、業務が止まる可能性があります。
その影響は生産スケジュールの乱れや経済的損失にとどまらず、人員的な負担が増すだけでなく、行政指導・罰則といったリスクにまで広がることもあります。
だからこそ、“壊れてから対応する”のでは遅いのです。
国や自治体では下水道施設全体の長寿命化に向けて「ストックマネジメント」の取り組みが進められていますが、民間工場の排水処理施設においても、同じ視点で計画的に維持管理を進めることが求められています。
ストックマネジメントとは?
既存の排水処理施設や設備(ストック)について、点検・調査・修繕・改築を計画的かつ効率的に実施し、施設の健全性を維持する管理の考え方です。老朽化状況に応じて優先順位をつけながら更新を行うことで、突発的な故障や操業停止のリスクを低減し、設備を長寿命化させるとともに、ライフサイクルコストの最小化にもつながります。



具体的には、以下のような老朽化対策を計画的に進めることで、顕著なムリ・ムダ・ムラを抑制でき、結果的に施設の長寿命化を図ることが可能となります。それぞれの事例を通じて、その効果を詳しく見ていきましょう。

実施前:動作を確認し、使用できているから問題はないと判断されていました。しかし実際には機器内部の劣化が進行しており、その影響で処理速度が1/5以下に落ち込む事態に。
この結果、処理能力の不足が深刻化し、汚泥が河川へ流出。最終的には行政指導を受ける事態となりました。

汚泥脱水機更新工事の実施
劣化した脱水機を更新し、新たな保全計画を策定。計画的な運用を始めることで、汚泥流出のリスクを回避しました。
さらに、脱水性が向上したことで汚泥処分費が削減され、作業時間の効率化にも成功しました。
▼過去コラム「脱水機の経費削減」もオススメです。
実施前:錆の発生は把握していたものの、漏水がないことを理由に対策を先延ばし。この結果、躯体にピンホールが形成され漏水が発生。
補修を検討したものの、構造全体の厚みが不足していたため補修を断念せざるを得ず、高額な費用をかけて水槽を全面的に更新することになりました。

膜分離槽減肉調査を実施
新しい水槽導入後は、再塗装や厚み測定を定期的に実施する保全方針を確立。
このアプローチにより、長期間にわたる水槽の使用が可能となり、修繕コストの削減が達成されました。
実施前:DO計などセンサーの測定誤差が把握されていながら、保全費用の高さから放置。結果的に、センサー誤作動で自動運転が停止し、排水処理工程が不安定化。
これにより、日々の運用で手作業が必要となり、業務の効率が大幅に低下しました。

水質測定器更新と
定期的な維持管理を実施
必要な水質測定器のセンサーを適切に選定し、メンテナンスを徹底したことで、排水処理の水質が安定し、効率的な施設運用が可能となりました。
これらの事例からも明らかなように、老朽化対策を行わない場合のデメリットは大きく、一方で適切な対策を講じることによるメリットは非常に顕著です。東産業では、排水施設の安定運用とその長寿命化を目標とした包括的な更新計画の提案を行っています。
| 時期 | 年数の目安 | 主な対応 |
|---|---|---|
| 部分更新検討期 | 15年〜 | 摩耗・部品交換、配管バルブ交換、初期性能維持 |
| 主要設備更新期 | 20〜30年 | ブロワや脱水機など主要設備の更新、処理効率低下の確認 |
| 全体更新計画期 | 30年以上 | 全体見直し、設備更新・方式変更、長寿命化計画検討 |
| 設備名 | 更新の目安 | 主な役割 |
|---|---|---|
| ブロワ(送風機) | 10〜15年 | 微生物へ酸素を供給し浄化を促進 |
| 曝気槽・沈殿槽などの槽体 | 30年以上 | 浄化や沈殿など主要処理プロセスの場所 |
| ポンプ類 | 8〜15年 | 排水や汚泥を各槽に移送 |
| 脱水機 | 10〜20年 | 汚泥の水分を除去し減容・処分負担を軽減 |
| 電気盤・制御盤 | 10〜20年 | 運転・設備を監視し安全な制御を実施 |
| 薬注設備 | 8〜15年 | 薬剤供給により処理効率や凝集を補助 |
| 計測機器(DO・MLSS等) | 5〜10年 | 水質や設備状態を数値化し異常や変化を把握 |
| 配管・バルブ | 15〜25年 | 排水・空気・薬品通路。腐食・摩耗に注意 |
排水処理施設には多くの設備が存在します。
そのため、各設備の適切な更新タイミングを判断するのは容易ではありません。
だからこそ、定期的な点検や維持管理に加えて、専門家による診断や助言が重要になります。
老朽化対策を実施する場合には、まず施設の現状について正確に把握することが求められます。
計画を無駄なく効果的に進めるために、以下の点を中心に現状を診断します。


排水負荷量調査とは、排水量や水質(BOD・COD・SS など)を把握し、排水処理施設にかかる実際の負荷を確認する調査です。
現状の運転条件が適正かを判断し、過不足のない運転管理や設備計画、トラブルの未然防止につなげることを目的としています。

単位装置別除去率調査は、各処理工程における流入水・流出水の水質を分析し、装置ごとの除去率を定量的に評価する調査です。
処理性能の偏りやボトルネックを把握し、運転管理の最適化および改善計画の検討資料とします。

躯体劣化診断は、コンクリート躯体の劣化要因(ひび割れ、剥離、鉄筋腐食、中性化等)を調査し、健全度を総合的に評価する診断です。
劣化進行の把握と補修・補強の優先順位検討に活用されます。

配管・タンク類劣化診断は、配管および各種タンクの腐食、減肉、漏えい等の劣化状況を調査し、設備の健全度を評価する診断です。
維持管理計画や更新時期判断の基礎資料として活用されます。

機器類劣化診断は、排水処理施設に設置されているポンプや攪拌機、ブロワなどの機器について、摩耗や劣化、性能低下の状況を調査・診断するものです。
故障リスクを把握し、安定運転の確保や計画的な更新・整備につなげます。

排水処理施設の運転状況や設備性能を見直し、電力使用量や薬品使用量、維持管理費の低減を図る取り組みです。
無駄のない運転管理により、安定性を保ちながらコスト削減を実現します。
老朽化対策については、更新するだけではなく延命措置、流用できる装置のみの更新という方法も可能です。
ストックマネジメントでは、一律の施設更新ではなく延命措置なども視野に入れることで、効率的な管理を行えます。例えば適正処理調査や脱水診断を活用することで、施設の過剰な投資を防ぎながら最適な管理プランを提案します。
▼維持管理支援については下記コラムへ
排水処理施設の老朽化対策は、単なる設備更新やコスト削減にとどまらず、企業の持続的な成長を支える重要な基盤です。
特に民間企業の施設管理者においては、設備の信頼性は企業の生産活動やコンプライアンスの観点からも重要な意味を持ちます。
設備の現状を正確に把握し、計画的な老朽化対策や設備更新を進めることは、企業全体の競争力を高める投資でもあります。ただ維持するだけではなく、施設のパフォーマンスを最大限に活用する視点を持ち、リスクを抑えながら施設の長寿命化と安定運営を実現することができます。
▲水処理事業へのサービス一覧はコチラをクリック▲
施設の管理に課題を感じている、または改善の余地を模索している方がいれば、ぜひ専門的なアドバイスを活用しながら取り組みを進めてみてください。
施設管理に課題を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
まずは気軽にお問い合わせください。
ハッシュタグから記事をさがす
実績、工法紹介などお役立ち情報